アメリカ旅日記 2

5・10

  朝、道の向かいのGeorgetown Commoms Apartmentを散歩。ひとつが4軒から6軒の画一的な建物(2階と3階)が、林のなかに30棟くらい縦に散在している。郊外でもこのような住居形態があるのは珍しい。並んでいる車はおおむねコンパクト新車で、かつてのアメリカ自動車社会を象徴したような大型車はほとんどない。ベランダに黄色いリボンを付けている家もある。あのリボンは、スーパーで99セントで売っていた。「1銭5厘」ならざる「99セントの出征」だ。

  そばのゴルフコースでは、リスが楓の実を食べている。よく見ると、種子は、緑豆くらい大きくてまだ柔らかいから、熊でも喜んで食べるわけだ。

  朝食後、雷雨。9:30、大学へ。寮の前の駐車場はほとんど満車。式場の体育館に入ると、リスター夫人がチケット・チェックをしていて、元の傘を渡されて驚いた。

  10:30、卒業式Commencement Exercises開会。バグパイパーを先頭に、スタッフに続いて卒業生が入場。祈祷のあと、聖歌隊の合唱。ソリストの黒人は美しく歌った。最優秀学生賞の授与のあと、学長挨拶、来賓挨拶。来賓はキャタピラー社のバートンCEOで、イラクの大量破壊兵器がなくなったので世界は平和に近づいた、世界経済の前途は多難、しかし、皆さんは夢を実現できる、努力を惜しまなければと話す。大まじめな挨拶で、ユーモアも少なく、話し上手とはいえない。

  学長が、バートン氏に名誉学位を贈呈。卒業生代表President of the class of 2003が挨拶して、シャベルと鎖を在校生に手渡す。意味は分からないが学生生活のシンボルらしい。次に、卒業生の数(102名)、学位の内訳、優秀学生(AGPによる3種類)の数が告げられて、一括して学位授与。学生たちは角帽の房を右から左に移す。それから、名前、学位の種類、教職資格、優秀生区分がアナウンスされて、学長から、一人一人にディプロマが壇上で渡される。

  同窓会長はここで結婚した日本人で、祝辞を述べる。チャプレンの祝祷のあと、The Ivy Ceremony。卒業生が輪になって、蔦の長い蔓を手に持つ。校歌を歌いながら、在校生が蔦の蔓を一人づつ切っていく。皆の手に、20cmくらいの蔦蔓が残る。なかなか味のあるセレモニーだ。

  散会後、それぞれに記念の写真を撮り、別れを惜しむ。

  前夜の会場で、ランチ・サービス。家族・友人と歓談。元と一緒にハワイに行った女子学生の祖父母と話す。

  寮でひと休みしてから、シカゴ方面に出発。#55から#355、#53でアーリントンに下りる。ミツワ(旧ヤオハン)を探して、買い物。ほとんど日本製品で、日本のスーパーと変わりない。近くのホリデイ・インに投宿。3人で@65ドル。ミツワで買った刺身(4種)・しめ秋刀魚・うなぎ・ご飯で、元は「幸せ!」。
 

 

5・11


 朝、風が強く少し寒い。散歩に出たが、道路ばかりで面白くない。ミニハウスが並んだ子供の自転車練習所が珍しいくらいだった。朝食は、ホリデイ・イン自慢のコーヒーとシナモン・ロール、米飯と海苔に味噌汁も。

 雨の中、ウッドフォード・ショッピング・モールに出発。全米一とかの巨大モールで、2階1部分3階の十字型の建物の3端にデパート、あいだに多くの店が並ぶ。アイリッシュ・グッズ店でゲール音楽CDを購入、2枚組で17ドル。ゴディバでは、72%カカオの小さい板チョコ。プラスティックのグラインダーが付いた岩塩のミルも購入。ゲーム店で、イラク首脳手配カードを売っていた。歴史資料としてひとつ購入、@10ドル。見事なガラス製の熊があったが、330ドルなのでパス。

 次はスエーデンのイケアのショップに。家具・家庭用品の大きな店。合板の家具類はシンプルで安い。日本に来ているような高価品は見当たらない。デザインの良い岩塩ミル、金属ボール型茶入れ、食品保存ケース、ゴムベらなど小物を買う。

 商品が豊富で、実用的で且つ安いのが印象的だ。アメリカの消費者は、価格の安さにつられて購買意欲を高める面がありそうだ。日本では、やはり、価格の点で、消費者の財布の

ひもが緩まないのではないか。

 スーパーで夕食の買い物をしてから、シカゴ市内方向へ東に走る。昼食時間が中途半端になったので、車中でシナモンロールなどで済ます。雨が降り続いているので、シカゴ市内見物はやめて、ミシガン・シティのアウトレット・モールに行くことにして、#94に乗るが大混雑。のろのろ走って、時間がかかり、モールはすでに6時で閉店。#94に戻って、モーテルを探し、スーパー8モーテルに入る。50ドル。

 部屋で夕食。チキン丸焼き、ローストビーフ、エンダイブ、パンとワインで、母の日を祝う。
 

 

5・12


 朝は#94の陸橋まで歩く。5:30ころだが、大型トレーラーやタンクローリーが疾走して、アメリカ経済の巨大さを感じさせる。早朝出勤の乗用車も多く、これは「働きすぎるアメリカ人」の印象だ。

 朝食のサービスは大きな菓子パンとコーヒー。ネットに繋ごうとするが、うまく行かない。XPでのGRIC接続法を読んでこなかったのが致命傷。今夜のホテルが決まらないままに、味の素の手嶋さんに電話で連絡すると、会社近くのアメリスイートを予約してくださるとのこと。もう一度後刻電話することにして、アウトレットに出かける。公衆電話で予約を確認して、道順を教えていただく。ハッシュパピーで靴を購入。車で昼寝中に、恵子と元は更にショッピング。コーチでベルトが安いというので3本購入してから出発。

 途中のアンティーク・ショップに寄ると品数豊富。Steak in Shakeでハンバーガーの昼食。#94でシカゴに。少し時間が早いので、オリエント博物館に寄るが月曜は休館。科学産業博物館を見ながら、ミシガン湖畔を走って#90に乗り、80の出口で下りる。アメリスイートを探すが、見当たらなく、オヘア空港まで走ってしまう。戻って、ヒンギス通りを左折、今度は、番地を見ながら行くと8101にはSpringHill Suites Mariott があるので入ると、ここが昔のアメリスイートだった。手嶋さんがコーポレート・レートで予約しておいてくださった。

 6:00に手嶋さんが迎えに来てくださる。和食をとお願いしたので、かなり遠くまで走って、煉瓦亭に。元が食べたいものを注文。すし・てんぷら・幕の内、枝豆・山かけ・胡麻合えなど、ビールと日本酒。元はすっかり満足。すしくらいはイリノイでも食べられるが、てんぷらは久しぶりだとかいって、パクつく。

 ここは、もとはフランスのオルサンとの合弁でつくった会社だが、1994年から味の素単独出資になる。味の素ハートランドリジン社で、手嶋さんが社長。手嶋さんは、ヨーロッパに年勤務してから、日本に帰っ たが、2年たらずして去年の10月に、ここの社長で赴任。味の素の海外勤務は、前から長い。手嶋さんは、海外勤務を楽しんでいる様子。

 ヨーロッパでは輸液など薬用アミノ酸だったが、ここでは、飼料用のバルクの商売。インテグレーターと呼ばれるブリーディングから食肉まで一貫生産の企業や、飼料加工会社、それから農協の一括購入が顧客。バルクで買って、余分を再販売する会社もあるので、苦労は多いらしい。

 ヨーロッパとアメリカの違うところの話しは面白かった。空港のカートが、イギリスはブレーキをかけると止まる方式、ドイツはブレーキをはずすと動く方式 、アメリカは、ブレーキがない方式というのが、欧米の差という指摘は鋭い。走りながら考えるのと、考えてから走りだすとの違いか?日本は、走りだしたら考えない、ときに考えないでも走りだす?

 アメリカの生活は、野菜・果物の豊富な点でヨーロッパよりも良いし、ドイツのように近隣へ細かい気遣いをしなくていいのも良いとのこと。アメリカ人は、衣服にはあまり気を配らないが、電気製品は大好きで、すぐに新製品に飛びつくという。このあたりにはプール付きの家は見当たらないから外からは分からないが、家の中は電気製品で溢れているのかもしれない。

ホテルまで送っていただく。さらに、明日、会社のネットに繋がせていただくことにした。
 

 

5・13


 朝は、向かいの住宅地を散歩。150坪くらいの区画に平屋が並んでいる。前庭に柵はないが、後庭には生垣や板の囲いがしてある。芝生が多く、花壇にしている家は少ない。リスやウサギもいる。オヘアは
of hareだから、ウサギは沢山いたのだろう。

 ホテルのビジネス・センターのコンピュータは日本語が表示できるので、GRICの使い方を印刷した。部屋で試みると成功したので、味の素に電話して手嶋さんにネット借用は不要になった旨連絡してもらう。

 ホテルの朝食はオートミールとリンゴにする。パンやヨーグルトなどは、おおむね甘い。カロリー過剰になり、肥満が多いのはうなずける。手嶋さんから電話をいただいたので、お礼を申し上げる。

 シカゴ市内に出発。地下駐車場に車をとめて、シカゴ美術館に行く。今日は火曜日の無料公開日でかなり混雑。印象派の部屋には日本並みの人の波。収集作品は多く、まんべんない感じ。ピカソの母と子が目玉で、はじめは左側に父親がいて子供に魚を差し出している絵柄だったが、ピカソは気に入らなくなって、父親を切ってしまって、母と子だけに変えたという絵。切られた父親の原画も隣に掛かっている。たしかに、父親は無いほうが絵としては迫力がある。子の眼差しと手は、父が差し出す魚に向いたままだから、見る人の想像力をかき立てる効果が出ている。

 三菱銀行が寄贈した東洋美術室も在り、仏像やアメリカのコレクター達の浮世絵などの収集品が飾られている。フラッシュなしの写真は撮れる。ピカソ・モネ・クレー・ミレー・セザンヌや唐三彩馬など。

 美術館の湖よりの建物は、旧シカゴ株式取引所で今は多目的ホールになっている。外には取引所の入り口のアーチが保存されている。

 地下駐車場の上のミシガン湖が見える公園で、手作りサンドイッチの昼食。シカゴの中心部のビル街が一望。シカゴ商品取引所もこの中にあるのだろう。リンゴやリラや草花が咲き、天気が良く、気分は最高。

 シカゴを離れて、#94を南下してミシガンシティに。またアウトレットによって、CDと大型ワイン抜きを仕入れる。クラシック・ディラン・バエズ・エンヤ。安いのは3ドル、高くて18ドル。クラシック・アイスクリームも食べる。ミシガンシティといっても、インディアナ州にある。

 #94を進むと、ミシガン州に入る。北上してから東に向かう。起伏のほとんどない大地に畑・牧場・林が延々と続く。この広大な土地に、それぞれ私有権を確定していったアメリカの歴史を考えさせられる。4時間ほど走ってフォード博物館があるディアボーン近くのRomulusBest Westernが朝食付き59ドルなので投宿。室内プールやフィットネス機器も備えている綺麗なホテルだ。

買い物にKrogerに行き、ソーセージ・サラダ・パン・オレンジジュースなどを仕入れて、部屋で夕食。時差があって、12時過ぎの遅い食事になった。

ネットに繋ごうとしたら、受話器からコードが抜けない。接続コードを持ってこなかったのはまずかった。
 

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