北京滞在記12月 その4
12月16日 | |||||||||||||||
昨夜から恵子、食中たりで大変。朝には治まったので、磯部まきを食べてから授業に行く。2年生に経済復興から平成不況までのテーマで、復興のところだけを話す。高度成長以降はすでに木曜日の授業で説明してあるので省略。3年生の修士論文についての感想を話す。論文には人柄が現れるという発言には少し驚いたようだ。論文テーマにどのくらいの広がりがあるかも話す。小さくまとまって終わってしまうテーマと、掘れば掘るほど深くなるテーマ。みな、まだ自分のテーマの広がりを自覚していない。自覚するかどうかが、これからの課題だ。 教員室での話。集中講義に来られた東北大の高橋先生が、北京大学の図書館で資料を見せてもらったら、料金を取られたという。清水先生が、市場経済になってからどの図書館も料金制を取るようになってきて、魯迅記念館でもそうだったと返事。見たい資料をたのむと、前よりもすばやく出してきてくれるので、サービスが良くなったと思っていたら、後から料金を請求されて驚いたとの経験談。 料金といえば、昨日から使えるようになったセンターのパソコン室も、1時間2元の料金を院生からとるのはおかしいとアピールしたら、北京外国語大学全体が課金システムなので仕方がないと清水先生。カード課金ではなく、1人の係を置いて徴収するとのことで、それはコストで動く市場経済ではないというと、代田先生が、そこが面白いところと発言。パソコン室に、時間を計る人間が座っているのが、中国のモダンとポストモダンの姿とか。 タクシーで帰宅。元がシーフード・スパゲティを作ってくれる。けっこう上手くつくる。シェフから研究者になったのは室山さんだ。その逆はあるかな? 元と買い物に出る。当代商城の地下のスーパーは、品ぞろいが悪いし高かったので、利客隆に行く。鳥鍋にして、夕食。 新聞は、中国当局がテロリスト集団と人物のリストを初めて公表したと報道。中国籍のウイグル族から、東トルキスタン独立を支援する人物と集団が出たようだ。キルギスタンでの中国外交官殺害事件などの犯人に特定されている。矛先が外国だからまだ良いが、向きが変わったら大変だ。 行政当局相手の訴訟で、人民が勝訴するケースが増えてきたとの記事。不当な土地収用や移住強制などに対する提訴で、勝率は75%にまで上昇したという。以前、春節の時期に鉄道料金を値上げしたことに対して不当と提訴した人物は、勝てなかったが、当局が鉄道改革を開始するきっかけをつくった弁護士で、今は、耕地80ヘクタール不当収用事件を当事者に代わって扱っている。それでも、まだ中国人は、訴訟をためらう傾向が強いと、ある判事が指摘している。映画の秋菊は、やはり、少数派なのだ。 |
12月17日 | |||||||||||||||
朝、双楡樹早市へ買いだし。リンゴ2種、ブロッコリ、クワイ、インゲン、紅苔菜、うどん、包子と餃子を購入。先日のクワイはクワイではなかったので、今日のは多分本当のクワイ。リンゴは富士系とデリシャス系、各6〜7個で@5元。紅苔菜は太いので皮を剥かないと堅いが美味。 新聞は、中国が中東和平に果たす役割を期待するとのイスラエル大統領の発言がトップ。北京市の人民代表選挙結果の記事。18地方区会4403名の代表が選出され、5年間の職に就く。投票率は95%、女性代表は32%、高等教育を受けた者79%。2336選挙区の内で、34選挙区では第1回投票では決まらず第2回投票を行った。党・組織推薦以外の独立候補者も当選した。海淀区人民代表会議には、北京交通大学から30歳の男性講師が選出されたが、彼は22人の推薦者から推されて独立候補となり、285人の候補のなかからの第1回選挙で第2位、上位6人についての第2回選挙でトップ4に入り、最後の選挙で1万2609票中1万106票を獲得して当選した。「われわれの真の代表を選ぶことができた」とは有権者の声。事実上の立候補制が普及する方向と思われる。 学校の違法課金の記事。電子入学手続き費、机椅子費、居住書類費、夜間勉学費、駐輪費、学校建設費、論文指導費などなど、学校・大学での授業料以外の課金が多いことが問題になっている。監査の結果、6000校で合計214億元の違法課金がみつかった。なかには、合格点数以下の受験生から協力費という名目の金をとって入学させたり、1万元はするコンピュータを寄付させたりする学校があったという。天津でも、有名中学が不足点数分を寄付させる話を聞いたことがあるから、広く行われているのだろう。監察を強化するとともに、ホットラインを開設して学生生徒の不平を聞く体制をつくったようだ。これも、独立採算原則を導入した結果の弊害だろう。 昼頃、濱先生が帰国されるので公寓の門でお見送り。周さん運転のアウディがここに向かう途中で追突事故を起こしたので、急遽タクシーでご出発。北京滞在記を含めて紀行本をまとめられるとのこと。芭蕉研究者の当代旅エッセイ、刊行が楽しみだ。 卵うどんで昼食。 明日の天津行きの切符を買いに行く。恵子達は明後日行くことにした。 午後は、天津社会科学院での座談会用のレジュメをつくる。 夕食は鳥の唐揚げ。 BSで「冬のソナタ」を観る。純愛ものだが、日本で大受けしたのは、現実に純愛が消滅してしまったからだろう。中国でも評判がいいようだが、こっちは、現実との二重写しを味わっていそうだ。韓国は、その中間くらいか?われわれが観るのはノスタルジア!?元は、出演者などコストを最小限にして最大の効果を上げる技はさすが韓国、すごいと言う。醒めているのは元か。 |
12月18日 | |||||||||||||||
朝食後、センターへ。1・2年生に「日本はどこに行くのか」を技術革新の現状と資源環境問題から話す。エントロピー概念は初めてのようで、質問が多い。 炒飯で昼食。タクシーで西直門、地下鉄で北京駅へ。南側の地下駅建設工事はかなり進んでいて、先月末に鉄筋作業をしていた部分はコンクリート打ちが終わって、土が盛られている。続きの部分ではコンクリート打ちが行われている。寒さ除けか、ミキサー車の回転ドラムには布が被せてある。打ち終わったところは、ビニールで養生している。 天津までは冬景色。養魚池や水路には氷が張っている。枯れ木立の間を、羊の群がのんびり歩く。駅からのタクシーが信号待ちをしていると、赤ん坊を抱いた若い母親がコップを持って物乞いに回ってきた。働く職場がないのだろうか。 |
12月19日 | |||||||||||||||
朝は明珠楼の食堂で朝食(@10元)。9時から「日本資本主義はどこに行くのか」を講義。平成不況、グローバリゼーション、市場原理主義と話して、経済成長が限界を超えたいま新しい経済社会の構築が必要と結ぶ。新しい経済社会は新しい社会主義になろうが、肯定できるかを問うと、雰囲気は否定的だ。20世紀社会主義の失敗はかなり大きなトラウマを若い世代にも残したようだ。沈先生も、経済の計画的運営をするにしても誰がどのようにそれを決めるかが問題と発言。経済システムと政治システムの関係は、複雑な問題だ。 昼は専家楼食堂で院生と会食。重慶大学教員のGさんが注文を仕切ってくれた。大学での身分を持ち続けながら博士課程で勉強している。つまり給料も年功も継続している。ほかにも、出版社や研究所に勤務しながら博士課程に在学している人が多い。これは良い制度だ。 会食後、センターでピンポンをする。米先生もやってきて試合をしたが負けてしまった。3歳年長だから仕方ないか。 夕食は、天津賓館の日本料理店神戸家で、楊先生一家、米、趙、宋、李、劉、陳先生と会食。さしみ、天ぷら、やきとり、焼き魚、サラダなど、まあまあの味。皆さん大きな家を買われて上流階級ですねというと、蓄えもなく借金があるからプロレタリアですと大笑い。知識階級が日の当たる場所に出られたことはご同慶のいたりだ。 |
12月20日 | |||||||||||||||
明珠楼食堂で朝食。9時半に烏蘭さんが迎えにきてくれて、途中で郭先生を拾って天津社会科学院東北アジア研究所へ。烏蘭さんはここに勤務しながら博士課程で勉強しているモンゴル族の女性。社会科学院事務主任の信金愛先生、社会科学院城市経済研究所の王忠文先生と話し合う。東北アジア研究所の田濤先生が通訳。日本経済とグロ−バリゼーションについて粗い話をして、質疑を重ねた。王先生は構造改革ができなければ日本経済は再生しないと主張。正論だが、小泉内閣にそれが実行できるとは思えないと回答。資本主義の現段階についての認識には共通する部分が多かった。 昼食を開発区内の立派なレストランでご馳走になる。豚の血でつくった豆腐状のものの煮込みは、初めてだが美味しかった。子持ちのシャコの唐揚げも良かった。東北アジア研究所へ信先生の運転で戻ってから、若い運転手が郭先生と一緒に友誼賓館まで送ってくれた。 東北アジア研究所は、開発区のなかの居住地域にあって、日本の戸建て住宅のような一軒を買い取って活動している。3階建ての広い住宅で、まわりは金持ちが住居や別荘に使用している。中国でこのような戸建て団地を見るのは初めてだ。裏にはダルメシアンとシェパード、シェパードの子犬2匹が飼われている。市内は大型犬の飼育は禁止だが、ここでは飼って良いとのこと。 年4回刊の「東北亜学刊」を発行して活発な活動を行っている。投稿を依頼された。 |