北京滞在記 9月 その1

9月1日

双楡樹早市へ買いだし。トマト5個3.7元、キャベツ小1個1元、ドジョウインゲン2掴み1元、焼き包子102.5元、豆乳1柄杓0.5元。トマトは完熟、インゲンは新鮮で美味、包子は蒸したものを焼いた感じで美味しい。豆乳は飲みきれず、煮ながら湯葉を採る。これも美味。

9:20の車でセンターに行く。守屋さんと同乗。マイクロバスでなく乗用車で、裏道を走る。書類を畔上さんに渡して、教科書を受け取る。携行図書は現在通関中とのこと。前任者が作成した飲食店マップをいただく。店の位置がすでに移動しているものがある。九頭鷹酒店もそうだ。変化の激しさがうかがえる。

前の中国側主任教授の厳先生と立ち話で、南開大学の王先生のことなど。北京の変化の激しさについて、必ずしも良い方向とは思えないと申し上げると、ケンタッキーやマクドナルドで育った最近の若者には分かってもらえないことだとのお答え。

帰途、外国語大学書店で北京地図を購入。大学の門付近は、新入生の荷物を番している親たちで一杯だ。理工大学を抜けると、校庭でバルーンを上げて式典をしている。入学式かと思ったら、建物の起工式で、作業員集団を前に関係者たちが挨拶をしていた。どこの大学も再開発ラッシュだ。学内市場は、常設店だけで、朝の引き店の姿はなかった。

昼は、恵子と元が城郷スーパーで買ってきた餃子と焼き麺。餃子は、注文に応じて具を包んでくれる生餃子で、500gで7元。三種類18個で8元。なかなかの味だった。

夕方、元の航空券を購入、上海まで1000元。ホテル売店でパンダ葉書45元、これは高め。双安商場前のスーパーでワイン(王朝3種)・ビールに中国産ブランディ(26.5元)を購入。

このワインは、甘すぎ。15元のは、80%だけがブドー酒。23元のには少し甘味添加。27元でようやく無添加100%ワイン。これも甘口。ブランディは飲める。

 

9月2日

双楡樹早市で、そら豆莢入りを見つけて購入1.5元。豆乳、包子ほかで、10.2元。高かったのはカリフラワーで、大が3.7元。

9:20のバスで初出勤。車中で、前学期に来ておられた池内先生から、バーなどについての御指南を受ける。センター講師控え室で、元がHPupしてくれる。時間5分前に、張さんが迎えに来てくれた。401教室で4人の18期生に第1回の講義。経済と社会の関係を話して、皆さんの修士論文のテーマ関連を話題にする。おおむね社会学分野の絞ったテーマだから、来年3月からの日本6ヶ月留学の成果は挙がるだろうが、そのテーマの持つ広がりは判っていないようだ。これからときどき、そのテーマの意味するものを話すことにしよう。元も一緒に教室に入って、顔合わせをする。来年来日の際、日本に知人がいるのも悪くはなかろう。

放課後、日本教員の皆さまと昼食。畔上さんの案内で東亜家常菜へ。緑豆麺サラダ、湯葉の青唐辛子炒めなどで、@16元。西瓜と甘菓子は店のサービス。和栗先生から、オーダーメイドの婦人服へのお誘いがあったが、即答は無理。

この間、シマンテック試用版でパソコンのビールスチェックをかけていた。帰室すると、すでに入り込んだビールスが2つ見つかっていた。消去するが、不安は残る。常駐の中国製ビールススキャンがチェックしなかったということだ。念のため常駐スキャンのアップデートを見ると8月19日。これでは、ビールスが入っても不思議ではない。他の方々のupdateはごく最近になっている。それでも、汚染の可能性は捨てきれない。清水先生に専門家によるチェックをお願いして帰宅。

午後は、琉璃廠に。栄宝斎で便箋と封筒を、向かいの書店で習字のお手本、王羲之、顔真卿と半紙を購入。歩いて祟光Sogoへ。醤油差など小物を買う。タクシーで帰宅、21元。

そら豆で晩酌。日本のそら豆より、小粒で堅い。ニラ卵、ちまきなどで夕食。

皆さまに、HPupのお知らせをメーリングリストで送信。挙名の適否をうかがう。

今日、青山学院の羽坂理事長から残暑見舞いの葉書をいただいた。これが、北京で受け取る私信の第1号。頤園公寓入口の事務所にメールポストがあり、郵便や新聞はそこにとどく。東京大学出版会の池田さんに頼んだ「概説日本経済史」10冊は、国際郵便で、事務所の人が部屋まで届けてくれた。小包扱いだと、郵便局から通知が来て、受け取りに行く方式だから、本は郵便扱いだったようだ。 

 

9月3日

朝、農業大学(中国農業科学院)に散歩。蜂蜜・ローヤルゼリーなどを売る店舗が並んでいるがまだ開いていない。池内先生の話の花卉店もまだ見あたらない。日中の開店なのだろう。

散歩、ジョギング、体操、バドミントン、運動器具をつかったストレッチ運動など、多くの人が健康運動をしている。芝生の草取りをするボランティア・グループも見受ける。健康と環境への意識は、ずいぶん高まってきたようだ。

朝食は、ホットケーキと温野菜。恵子は、どうも調子がおかしいという。先日の天麩羅もサクサクしすぎだ。粉の袋を確認すると、饅頭用にイーストが入っている加工粉だった。これで納得。

初書道は、王羲之の「心」にする。久しぶりの筆で、なかなか難しい。ソウルで買った筆はオオカミの耳の毛とのことだったが、紙との相性はもうひとつの感じ。慣れればどうにかなるだろう。

昼の炒飯は、日本米だが美味しく、作った恵子も、火力が強いせいかと、意外の出来に驚いている。オーブン無しの2口レンジで、大きいのと中くらいのバ−ナーはさすがに火力が強い。

3:00、中国社会科学院日本研究所経済班主任の張淑英先生が見える。貝塚啓明さんの弟子で、仙波先生のご紹介でお会いすることになった。中華日本学会での講演を1015日に決めてから、いろいろのことを伺う。所有権・使用権が、実質的には発生するが、法形式的には明確ではないらしい。ケースによって異なっていて、過渡期的な複雑さがあるようだ。庶民の貯蓄は、都市では、郵便貯金もあるが銀行預金の方が多いとのこと。対日感情は、小泉内閣いらい悪化していて、北京上海高速鉄道の行方も不明瞭。毒ガス問題よりも、靖国参拝問題の方が重いという見解だった。庶民は、日本よりもアメリカの方が好きらしい。

壁ボードを作ろうと思って材料・道具の販売店を伺うと、ホームセンターは無いとのこと。中国男性は、日曜大工はしないので、まだ専門店はないようだ。

恵子達が買い物に行っている間、China Dailyをめくっていると、中国経済の隠された問題点として、投資と消費のインバランス、財生産に比べてのサービス生産の遅れ、社会保障の不十分さから庶民は財布のひもを締めて貯蓄に励んでいることが指摘されている。鉄鋼価格など生産財価格は上昇するが、消費者価格は低迷するので、企業の採算は苦しいのが現状。

ニラレバ、厚揚げの煮物、湯葉の煮付け、包子などで夕食。 

 

9月4日

雨で散歩には出られない。

7:30、バスでセンターへ。19期生も加わって8人の院生と、日本・中国・アメリカ社会の比較をテーマに語る。ベネディクト「菊と刀」は読まれていて、「恥の文化」を日本の特徴と捉えているが、中国の「面子」を重んじる文化との違いはあまりはっきりしていない。神仏を信じないところは同じようだから、「罪の文化」ではないが、たしかに「恥」と「面子」の区分は難しい。日本的生産方式、大学生活、法治国家、若者の生き甲斐などを話題にする。9日(火)夕食会を開くことにする。

10:10のバスで帰室。China Dailyでは、北京の犬規制の話が面白かった。これまで、犬を飼うと初年度5000元、次年度以降2000元を市に支払っていたが、新しい規制条例では、初年度1000元、次年度以降は500元に引き下げられる。ただし、犬の立入禁止地域やエレベータ使用禁止などの新しい規制が加えられる。ガイド犬・介護犬と1人暮らし老人の犬は例外適用。飼育料引き下げで、もっと犬の数は増えるだろう。

他には、人民元切り上げ問題、農民の窮状の記事などが目立つ。スノー財務長官との会談で、胡首相は、元の安定の必要を強調し、中国人民銀行総裁は、国家管理銀行の改革とWTO加盟後の変化が一段落することが元の変動相場移行の条件と発言している。まだ切り上げはしそうもない。

農民の問題では、地方政府による工業開発用の農地買い上げが、農民を困窮させているとの記事。買い上げ価格が市場価格の数ダース分の1とかなり低いので、土地を売った農民は貧困化する。だいたい、1987年から2001年までに、150万ヘクタールが、一軒当たり数百元から4万元程度で買い上げられ、なかには強制買収するケースもあるようだ。買い上げ価格を正当な水準にすることと、農民を社会保障のネットワークに組み込むことの必要性を主張する記事だった。

昼食は、カレーうどん。

2:00、中国社会科学院工業経済研究所の劉さんが見える。飯田経夫さんの名古屋大学時代のお弟子さんで、近代経済学を専攻したが、今は、経営管理を専門にしている。由井先生の引受で、訪日されるので、元との顔つなぎをする。

夕食は李平・易友人ご夫妻と「天外天」で。先日の「九頭鷹酒店」でのご馳走の返礼。北京ダックを主菜に、獅子頭(大きな肉団子)、日本風豆腐とピータンの冷製、丸なす炒め、地鶏煮込み、羊肉炒め、中国豆腐炒めなど。安価で美味。事情通の李先生の話はいつも興味深い。

 

9月5日

 朝、理工大学へ行くが早すぎてまだ朝市が店開きしていない。北門から出て小南庄の朝市に歩く。賑わっているが、よく見ると品物はあまり良くない。安いが品質は落ちるようだ。途中の「杭州小包子」で1篭(10個入り2.5元)買ってから、理工大へ戻ると店は開いている。ライチー、トマト、インゲン、包子(6個、1.5元)を購入。

 9:20のバスでセンターへ。共同研究室で、日記をup。陳北京外国語大学学長が見えたので、みんなで記念写真をとる。10:30、入学式。陳学長、教育部(外交部?)代表、日本大使館代表、国際交流基金代表の挨拶、新入生代表の決意表明の後、全員で記念撮影。新入生代表は、男子院生が中国語、女子院生が日本語で挨拶。綺麗な日本語だった。昼食会は失礼して帰室。

 陳晋先生夫妻と昼食。中国自動車産業に関する著作で博士号をとられた沖縄大学教授で、中国経済産業事情をいろいろ伺う。天津トヨタの手作り的生産方式に驚いたと話すと、中国の工場としては珍しくないとのこと。やはり、労賃が低いので、省力型技術は投資効果を十分検討したうえでその投資額を決めるようだ。

 奥様の林さんは大学院生で、葉綺先生のお嬢さん。北京生活のノウハウを伺う。楊貴妃がライチーを早馬で運ばせた話が、ここのライチーを食べてみて、納得できない。つまり、ライチーはかなり保存性のいい果物だから、なぜ早馬なのかと伺うと、表面が茶色になっているのは庶民の食べるライチーで、産地で採りたてのものは皮が赤色で、食味も違うのだそうだ。楊貴妃は赤いライチーを好んだというわけ。日本の味噌がソゴーになかったと話すと、日本大使館付近に日本食材の専門店があるとのお答え。在留日本人向けの情報ネットワークもあるらしい。後日、教えてくださるはず。燕山ホテル前の広東料理店は、豚の皮パリパリ焼きをはじめ、安くて美味。

 天津行きの準備をして、ありあわせで夕食。量が多い料理の余りを持ち帰るのが最近の中国の習慣らしく、おかげで、外食すると冷蔵庫が賑やかになる。アメリカでも持ち帰りは普通だ。日本食は、余りが少ないせいか、持ち帰りは習慣化していないのではないか。宴会料理を折り詰めにする慣習はあったはずだが。

 8:00、喬さんが迎えに来てくれて出発。北京空港への道を運転手が迷ってしまい、高速沿いの混雑した一般道路に入ってしまった。政治学院の乗用車だが、北京市内は苦手らしい。道端の人に尋ねながら、どうにか机場高速に乗る。早稲田商学部の久保先生を出迎えてから天津へ。11:30ころ南開大学到着。愛大会館302号室に投宿。学生用の2人部屋で、ホテル風に作られている。本棚・机が2つずつとテレビ・冷蔵庫があるが、戸棚はホテルサイズで収納スペースが少ない。

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