チロル旅日記1

 

2・14

 
  8時15分に家を出る。成田に着くと12:45のSK便は、16:00に変更とのことで、空港食堂の2000円券を二枚くれた。中華で豪華な昼食をとり、UCラウンジでビールを飲みながら時間をつぶす。出国手続きをしてロビーに入ると、呼び出しがあり、ゲートに行くと、エコノミーが満席になったので、エコノミー・プラスの席に変えてくれた。16:00出発、11時間半のフライト。

コペンハーゲンに着いたのは7:55で、ウイーン行きには間に合わず、乗り継ぎカウンターで、明日のフライト搭乗券とホテルまでのタクシー・クーポンをもらって、タクシーに乗る。ラディソン・ホテル・スカンディナビアにチェックイン、ツインの部屋に落ち着く。一風呂浴びてから、ママズ&パパズでビュッフェ。ビール、ワインも付くが、料理はシンプル。乗り継ぎできなかった乗客用のサービスで、日本人が多かった。

部屋から、ウイーンのメルキュ−ル・ホテルに電話で明日行く旨を伝える。モーニングコールを頼んで就寝。
 

 

2・15


 5:30のコールより早く目がさめたが、そのままベッドで休んでいると、コールは機会的な音だけ。荷物をまとめてチェックアウトし、早立ち者向けのコーヒーとクロワッサンで朝食。タクシーで空港へ。出国検査後、出発ロビーの免税店をのぞいたが、ファインフード店はまだ開いていないので、キャビアは買えず。

7:40ウイーン行き出発。1時間40分でウイーン到着。機内では水とコーヒーサービスのみで、他は有料。空港は広大だが、建物はさほど立派ではない。入国検査もなく荷物をとって外へ出る。リムジンバスで国鉄西駅へ(@6ユーロ)。都心への高速道路の周辺には石油化学工場が並んでいる。片道2車線で北京の空港高速より貧弱。南駅経由で西駅へ着く。街並みはあまりきれいな印象はない。新旧雑然といった感じ。

駅の西隣りのホテル・メルキュール・ベストバーンホフに投宿。古風なこじんまりしたホテル。食堂でコーヒーとクロワッサンをもらってきて2度目の朝食。チョコレート、胡桃餡、ジャムなど入った甘いクロワッサン。駅に行き、ATMで300E引き出し、自動販売機で8日券を購入(24E)、フォータイルスカルテの申込書をもらう。

地下鉄・路面電車でオペラ座前の切符売り場へ行き、27日のアイーダのボックス券を買う(@157)。こんな服装でいいかと聞いてから購入した。リングと呼ばれる環状電車で市内見物。市議会議事堂広場で下車、氷祭りで臨時スケートリンクがあり、皆が楽しんでいる。議事堂は驚くほど立派なゴシック建築だ。隣の国会議事堂は修理工事中。こっちも立派。リングを回ってオペラ座へ戻り、ザッハ・ホテルで本家ザッハ・トルテとチーズケーキを賞味。チョコレートケーキのホイップクリーム添えだが、杏ジャムの酸味が効いていて美味しい。コーヒーともでチップ込み16Eを払う。

リングを戻って、博物館前で下車。同じ形の、自然史博物館と美術史博物館が、マリア・テレジア像をはさんで建っている。美術史博物館(@シニア7.5)へ入ると、大理石をふんだんに使い、凝ったコテ細工と壁画で飾られた内装に驚かされる。エジプト室は、ミイラの石棺、マスク、副葬品の見事なコレクション。大英博物館より良質な感じだ。ヨーロッパの博物館を見るとき、いつも、どうやって手に入れたかのかが気になる。アジア支配の戦利品、エジプトの人達はどう感じるのか。

絵画室は、レンブラントの特別展のほか、古典画のコレクション。レンブラントは点数がすごかった。もともと所有品は多いところに、借入品も加えての展示。フェルメール、ラッファエロが1点、カラバッジオが2点、ブリューゲルは沢山ある。古典画に集中しているので、見やすい。展示室には長いすが置いてありゆっくり休みながら鑑賞できる。有名なクリムトの壁画は、意外に小さなもので、見つけにくかった。絵はがきは25枚で割引、18E(@は0.9)。

26日から泊まるホテルの位置を、総合博物館の建物の裏通りで確認してから、地下鉄でシュテファン聖堂へ行き、巨大シュ二ッツェルの店、フィグルミューラーを探す。本屋に聞いて、細い路地の店に入る。直径30cm近い巨大なシュ二ッツェル、子牛のレバー炒め、レスティとホイリゲを堪能(チップ込み34E)。一人では食べきれない量で、隣の二人連れもサラダとシェアしていた。ホイリゲは軽い。

近くのスーパーを覗くと、日本より安い感じのものが多い。ウインナーソーセージは売っていない。魚はマスと鮭だけ。水と板チョコ(1.89E)を買って地下鉄で帰室。


 

 

2・16


 4:00目覚めて日記を書く。外は雪が降り続いている。朝食はサーモンから生ハムまで揃って豪華。フォアタイルスカルテ申請用紙に書きこみ写真を張って駅へ。簡単に受け付けてくれて、半額割引のカード(本物は後日郵送してくれる)をくれた。シニア用で@26.9Eだからお得。

地下鉄と路面電車でベルべデーレ宮殿に。毛皮の似合う美人が乗っている。この国は美人が目立つ。雪の庭園は、あまり風情がない。二つの宮殿は美術館になっている。オーストリア・ギャラリーを見る。クリムトの「接吻」やエゴン・シーレの「死者と婦人」が目玉。ムンク、ココシュカ、ルノアールなど、19・20世紀中心のコレクション。足がくたびれたのでカフェでケーキとコーヒー。クリームトルテは大きくて2人分ある。それほど甘過ぎず美味しい。

電車で王宮へ。どこから入るのか分からず、うろうろすると教会からパイプオルガンの音が聞こえたので入る。王宮のアウグスティーナ教会で、ステンドグラスなど無く、質素な感じ。次に見つけたのは国立図書館。王宮の建物の一部だけあって立派。入館料をとるので中には入らなかった。

ようやく王宮見学入り口を見つけて入る。シシイ博物館は王宮の部屋を見ながらエリザベート王妃の一生をたどる展示。さすが美人の誉れ高い王妃で、立像や人物画は見応えがある。館内では補修作業中の部屋があり、金箔張りを見学。若い職人が器用に仕事をこなしていた。

次が銀器コレクション。日本語説明器を借りて回る。調理用銅器、銀器、金めっきした銀器、ガラス器、陶器など圧倒的な質量。伊万里の上等なものが数多く展示されている。ハップスブルグ家の富裕ぶりがよく分かる。

地下鉄で西駅に戻り、スーパーで水を買おうとしたらきのうの3倍の値段。安いビールを2本買って(@0.9)、パン屋でチーズサンドを仕入れて帰室。4時前だが、ビールとパンで昼食、一風呂浴びて昼寝。

8時にホテルのレストランで夕食。スープ(3.7E)、グーラッシュ(11.4E)とチキン(11.9E)、白ワイン(19E)。スープはジャガイモ中心のとろみのある家庭料理風。グーラッシュは塩辛過ぎ。ニョッキ添えで、形の整わないニョッキの製法が不思議。チキンはパセリバター詰めフライで、ジャガイモサラダ添え。このサラダ、おろしリンゴの入ったドレッシングで和えたもので珍しかった。ワインはヨハネスブルグのトロッケンで美味。
 

 

2・17

 
 朝食をたっぷり食べてから西駅に。インスブルックまでの切符を半額で購入。1ヶ月通用だったので、サンアントンまで買ってもよかった。9:34のザルツブルグ行きに乗る。雪のなかの農牧地帯は単調な眺め。検札のおじいさんが来て、切符とカードを丹念にチェックして言うには、カードは明日から有効だと。なるほどそう書いてある。カード発行者が間違えたのを、切符販売者が気づかなかったようだ。おじいさんは、今日、また乗るなら支払わねばならないと言う。ザルツブルグまでは大目に見てくれた。

12:50ザルツブルグ到着。インフォで聞くと少し遠いのでタクシーでホテル・メルキュールへ。こじんまりしたホテル。歩いて中心街へ。道幅は狭く、入り組んだ街路が、古さを感じさせる。人形劇場に行くと、今は何もやっていない。コーヒーを飲んでから、モーツアルトの家を見物(@シニア5E)。日本語オーディオでゆっくり部屋をまわる。古いチェンバロやオルガンでの作品演奏もあって面白い。家族の紹介、演奏旅行の経路の説明のあと、ビデオで半生記が上演されて終わり。後半のあのみじめな話はなぜか入っていない。出てしまったが後編があったのかもしれない。

橋を渡ると、ヨーロッパ中世以来の街並みで、建物の中を細い路地が通り、広場につながる。安物から高級品までショウウインドウが綺麗だ。冬物はバーゲンしている。ブーツなど安い。

ケーブルカーで城塞へ登る。日本語オーディオ付きのガイドツアーに参加。大司教領で、歴代の領主が城をだんだん堅牢に構築していく模型が面白い。最後の増築は対トルコ防衛工事だったがトルコの侵略は無く、負けたのはナポレオンだけで、無血開城だった。牢獄を通って塔に登ると街が一望できる。大司教のレジデンツに教会が直下、川向の丘には城壁のなかに夏の居城、裏側には薬草園と未張り番の小屋、遠くに領主の別邸。城塞内は結構広い。小教会の鐘が5時を告げている。

ケーブルカーで下りてモーツアルトの生家を探すが見つからない。広場では露天の野菜・果物屋が店じまい中。タバコ屋で聞くと、通りすぎたようだ。戻ると、大きな建物に生家と書いてあった。小さな建物をイメージしていたので見つけられなかったようだ。中には入らず、向かいの広場のかどの2階建ての小店、ツーム・オイレンシュピーゲルで夕食。魚スープ、マスのフライ、ビーフ・ストロガノフに白ハウスワイン(500ml)。名物スープは、魚・エビ・野菜のごった煮ポタージュで塩辛すぎ。いくら塩の町でもこれではみんな高血圧になる。マスのフライはムニエルで、カブとキャベツの入った白いソースの上に乗っている。ストロガノフは大ぎり牛肉でホイップクリーム掛け、ニヨッキ添え。肉の脂身が少なく味が出ていない。支払いはチップ共合計、61E。天井が板張りで雰囲気の良いこじんまりしたレストランだが、味はいまいち。

歩いてホテルに戻る。途中のスーパーはもう閉まっているので、ワインは買えず。早寝。

コールを頼んで就寝。
 

 

2・18

 
 2時に目が覚めて日記を書く。さらに、原稿も書き始める。再眠して、7:00朝食。このホテルも、豪華なサービス。オレンジのスクイーザーもあり、ケーキも数種類出ている。ゆっくり食べて、8:50駅に歩く。9:20の電車でハラインへ。バスに乗り継いで、
Bad Duerrenbergの塩鉱山へ行く。

11:00からのツアーを待つあいだ、そばのケルト集落を見る。塩を発見して掘っていたケルト人の住居・家畜小屋・作業場などが復元してある。ログハウスで藁ぶき。雪が深く、塩坑道入り口までは行かなかった。

11:00近く、イタリアの中学生のグループが到着して先行したので、40分ほど待たされた。白い安全服を着て、一列ベンチのトロッコにまたがって坑道を数百メートル入る。はじめはコンクリート補強だがその先は坑木と厚板で支えた坑道。下車して電灯が少なく薄暗い坑道を歩く。ところどころに塩鉱脈が露出している。白・黒・うす赤まじりの鉱脈だ。聖人像を置いたくぼみもある。かなり広いホールでビデオ説明。海水に溶けた塩が、内陸に取り残された海が消滅するときに沈澱したのが岩塩だと知る。鉄鉱石が生物の営みと関係するような具合ではないが、大陸移動の歴史が、岩塩を作ったわけだ。ビデオは、ザルツブルグの大司教と従僕の対話を通して、塩がいかに豊かな財源であったかを分からせる仕立てになっている。ドイツ語に英仏のスーパー入り。案内人の説明は独・英でしてくれる。中国人のグループがいて、ガイドが中国語に訳して説明している。顔立ちからは台湾系だろう。

さらに下の坑道へ降りる。木製の滑り台で、2本の木道に2・3人ずつまたがって滑る。かなりの長さなので、ちょっとしたスリルが味わえる。さらに歩くと国境。ドイツ領に入って歩きつづける。古い掘削機械も置いてある。岩盤に入り込んでいる塩鉱脈を掘るので、かなり硬い岩を掘る作業のようだ。

ここでもビデオが写され、大司教が年間36000トンが貨幣に変わると誇っていた。掘りだした岩塩は、一度溶かして煮詰めて精製する。大きな塩釜で作業する絵が写され、あたりの森が伐採され尽くしたと説明がある。日本の塩田地域と似たような環境破壊が、岩塩地域でもあったとは面白い。精製塩は1mほどの角錐状に成型されて出荷された。

次は地底湖の旅。かなり広い塩水湖を木製はしけで渡る。照明と音響効果で地底船行気分を高めてくれる。魚はいないとのこと。

さらに坑道を進み、落盤事故で死んだ人骨の発掘現場などを過ぎて、3度目のビデオ。対ドイツ戦争が塩をめぐって戦われ、敗れた大司教が、ザルツブルグ城塞に幽閉されて死を迎えるまでの話。もう一度、木の滑り台で降りる。膝で木を挟んでブレーキをかけるが、スピードが遅すぎると降り場の終点に届かない。オーストリア領に戻り、エスカレーターで昇って出発地点に。パネル説明で、現在は水を地中の塩鉱脈に注入して溶かして採集し、精製する方式で生産が行われているのが分かった。また、トロッコにまたがって坑道口に戻る。約1時間の面白いツアーだった。

売店で岩塩を買っていたらバスに乗り遅れた。1時間待つので、2停留所歩く。ケルト博物館の近くで降ろしてくれるよう運転手に頼んでおいたら、停留所でないところで降ろしてくれた。言われた方向に歩くが見つからず、インフォメーションで聞くと、川向とのこと。

昨年末まで改装工事をしていた新装の博物館はなかなか立派。この地方のケルト遺跡からの出土品の展示と塩鉱山関係の展示が中心。ケルト遺物も美的に優れたものがある。動物や人型の細工のついた青銅器や大型の陶器壷など見応えがある。帰りに絵はがきを買うと、鉱山にも行くといいというから、もう行ってきたと答えてチケットを見せると、それならここの入館料(シニア@3E)は含まれていると返金してくれた。

駅まで歩く。旧市街は道が狭くくねくねしている中世都市特有の造りで趣がある。地図にbahnとある方に歩いたが駅は見当たらず、子供に聞くと知らない。婦人が教えてくれたのはかなり戻る方向だった。地図のbahnは、 bahnhofではなかったようだ。恵子にしかられながら駅にたどり着く。電車は数が多いので、遅昼がわりにお菓子でも食べようと町へ戻るが、新市街には菓子屋が無いのであきらめて電車に乗る。この日帰りツアー、料金はシニア@19.1Eと安い。

中央駅前のショッピングセンターで、夕食の買い物をして帰室。パルマの生ハム、ローストチキン、マカロニサラダ、キャビア、パン、ワイン、食後はアイスクリームとモーツアルトクーゲル。このスタイルは、くつろげるし安いので、時には良い。
 

 

《NEXT》